上演中に役者さんに向けてかかる「掛け声」にも、色々あります。
歌舞伎の時に「なんとか屋!(屋号ですね)」と客席から声がかかるのは、いわゆる「大向う」。調べてみましたら、舞台から一番遠い席、そのお席を「大向う」と呼び、そこに座って観覧される方々や、そのお客様からかかる声を「お向う」といったそうです。現在はあちこちのお席から声はかかります。
歌舞伎公演でなくても「座長公演」などでも掛け声はかかります。
例えば主役の森繁久彌さんが舞台に登場される時に「森繁!」とかかります。
大きな劇場でオペラグラスなどなかった頃には、上の階からだとやはり小さく見えますから、掛け声でどなたが出て来たか、知らせるためでもあったのだろうと思います。
宝塚歌劇やSKD(松竹歌劇団)などの公演でも「掛け声」はかかりました。
例えばトップスターさんが「ここぞ!」というシーンで声がかかります。
大概は女性の声で「〇〇さん!」とかかり、決まるとかっこいいんだ、これが(笑)。
私の友人で掛け声をかけてくださる人がいます。
ご贔屓(ひいき)の女優さん、俳優さんが出演されている時に声をかけるわけですが、この友人の掛け声は、例えば「小西さん」とかけるとすると「こーにーしーさーーん」とたっぷり長めの声で、とてもインパクトがあります。
この友人は近くのお席の皆さまに「大きな声を出しますから」と、事前に伝えてから声かけされていました。
舞台にまで通るほどの声ですから、いきなりだとビックリされてしまうからでしょう。
その日は修学旅行の学生さんが大勢ご来場で、生徒さんたちに「大きな声出すので、びっくりしないでくださいね」とお知らせしたんだそうです。
そうしたら生徒さんが「あの人、大きい声を出すって言ってます」って、先生に報告されてしまったそうで、「バツが悪かったわ」と笑って話されていました。
掛け声がかかるとやはり公演が盛り上がります。かけられた役者さんも気持ちがいいに違いありません。
いいタイミングで声がかかると、こちらの心も弾んで観劇の楽しさが増しますよね。