テンペストのキャリバン 更新

テンペストのキャリバン ~松重 豊さん~

シェイクスピア作「テンペスト」
昭和62(1987)年 3月に蜷川幸雄さんの演出で、日生劇場にて上演され、平 幹二朗さん、田中裕子さんが主演でした。
私はシェイクスピアは機会があれば観るようにしておりましたが、「テンペスト」はその時初めて観ました。

テンペスト ~嵐~
元ミラノ大公である主人公のプロスペローは、弟アントーニオらに権力を奪われて、絶海の孤島に娘のミランダとともに流れ着きます。そして12年の歳月が流れ……
ものすごい嵐(テンペスト)が吹き荒れ、ちょうどこの島の近くを通りかかった船が難破、その船にはナポリ王家族とその一行が乗っていたが、なんと奇しくも弟アントーニオが乗り合わせており、島に漂着したのでした。
かくして、敵同士がこの島に集うことになり、ここから物語は展開していきます。

さて、この孤島の持ち主「魔女シコラクス」、その息子である「キャリバン」が登場します。
キャリバンは島の原住民、突然現れたプロスペローに島を乗っ取られ、こちらの物語も同時に進行していきます。
キャリバンは魔女シコラクスと魔物の子であり、キャリバンを見た人は「魚のような化け物」と語っており、テンペストでは大概のキャリバンは「一部が魚」のような姿で出て来ることが多いです。
私が最初に出会ったテンペストではキャリバンは 松重 豊 さんが演じられておりました。本棚をひっくり返して公演プログラムを探しだしページをめくってみましたところ、まあまあとてもお若い、松重さんのお写真がありました。

松重さんのキャリバン、忘れたくても忘れられない強烈な印象を残してくださっております。

お衣裳が、キャリバンのお衣裳がものすごい、びっくり。
松重さんはなんと大きな「こいのぼり」にすっぽり入っているのです、そう、端午の節句に空に泳いでいる、アレ。
あれにすっぽり入って、その「こいのぼり」から4本の手足がにょっきり出ていました。
キャリバンが登場しただけで、客席は湧いてしまったと思います。
プログラムを見ると、この素晴らしいお衣裳は小峰リリーさんの手によるものでした。
あっけにとられたまま、あれよあれよと物語が進行していったことを覚えています。素晴らしい出来栄えでした。

松重さんですが、新国立劇場「昔の女」2009年に出演なさっております。
その時の制作プロデューサーにこの「テンペスト」の話をしたところ、松重さんご本人に「うちの劇場案内係さんで、たーくさん芝居観てるおねえさんがいて(私のことですね)、その人が、松重さんはなんといっても テンペスト の松重さんが一番好きです、っていってましたよ」と話したら……
松重さん、にんまり笑われたとのことです。

「テンペスト」はその後、昭和63(1988)年 12月 帝国劇場で上演されました。
その年の夏、英国スコットランドはエジンバラの国際芸術祭に蜷川さん演出のこの「テンペスト」が参加、大成功を収めており、その凱旋公演のようです。もう一度観たいなぁ。
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と書きましたが、松重さんの公式ブログには

【シェークスピア作「テンペスト」
昔、劇中の魚の化け物という役を振られ、
衣装プランでこいのぼりを持って行き採用。
最終的には本場イギリス公演まで鯉のぼり着用す。】

とありました。
へぇ~、こいのぼりのアイデア、ご当人が提案されたんですね。
それで採用か~
なんておもしろい!


チラシ 日生劇場


プログラム 帝国劇場