鶴亀/つるかめ

帝国劇場に勤務していた頃の話です。

関西に足を運びました。
なんの用事だったか思い出せないんですが、もうひとつの目的は「梅コマ」で舞台を観ることでした。
現在は閉館しておりますが、大阪の梅田にあった「梅田コマ劇場」、現在の「梅田芸術劇場」の場所に建っていました。その劇場の公演を観せていただきました。
私もいわゆる「劇場関係者」だったので、上司が「見学」の申し込みをしてくれました。東宝系のお芝居だったと思いますが、残念ながら公演名が記憶にないです。

梅田コマ劇場は、まだ実家にいた20才のころ贔屓(ひいき)の役者さんが出られていたので、観劇に行ったことがありましたから、2回目でした。

舞台が「独楽(コマ)」のように円形で、カーテン(緞帳)もクルリとまあるく舞台を取り囲んでいたと思います。
通称「梅コマ」と呼ばれておりました。
ちなみに、東京にも「新宿コマ劇場」がありました(2008年閉館)。

さて、用意してくださったチケットを見ると、お席は「二階」でした。

「鶴 〇〇番」となっていたと思います。
「え、鶴!?」と、とにかくビックリしました。
二階の最上手と下手に、張り出した形に作られた座席で、「鶴」は下手でした。
扉番号も「鶴」扉となっています。実際に座席を見て「鶴 ○○番」を確認しました。
え??と反対側の扉に回ってみると「亀」になっています。
え~~、と2度ビックリ。
座席で観劇しながらも「鶴/亀」が気になって気になって (笑)。

東京に帰って上司にお礼を言いつつ、このことを尋ねてみました。

上司は博識で「大阪船場辺りの商店(船宿、料亭、呉服店など)のお嬢さんや息子さんがお見合いをする時、劇場が使われたんだよ」と。
最初にお互いの容姿を確認(すいません、色気のない書き方💦)するのに、劇場のイスに座ってお互いを見合った、ということらしいです。
そんな中、上手と下手に分かれた「二階」のちょっと離れた張り出し席が選ばれたのでしょうか、それとも最初からその目的で設けられた場所だったのか。
それで縁起を担いで「鶴 亀」となっているとのことでした。

なんてロマンチックで粋な計らいでしょうか。

大昔の話で、携帯電話などなく、座席表示の写真を撮影することもできませんでした。
今なら、すかさず「スマホ撮影」ですね (^_-)-☆




梅田コマ劇場