大切だった応急救命救急

新国立劇場での勤務でありがたかったことのひとつに、公演時に「看護師さんが常駐してくださること」がございました。

私は、帝国劇場在籍中に「応急救命救急 上級」消防署の講習を受けておりましたし、
Bunkamuraに入社する前には「日本赤十字社」の救命救急講習も受講しました。
劇場やホール、美術館なども併設した「複合文化施設」では1日で数千人のお客様の来場が見込まれます。そんな中、劇場側で救命救急対応ができること、これは必須条件ともいえると思います。

公演中はやはり体調を崩されたりするお客様がいらっしゃり、救命救急対応は大いに役立ちました。

みなさま、一生懸命取ったお席ですから、少々無理をしても来場されます。
コロナ後は状況も変わってきてはいるでしょうが、それまでは少々の発熱などの症状ではそれを押してご来場されている方も多かったのではないかと思います。

公演をご覧いただくと 感動/興奮 されたりで血圧が上がる方がいらっしゃる、休憩時に空腹でシャンパンやワイン、ジュースなどを召し上がられますと、胃に急に血液が集まるようで「貧血」の症状が出る方、無理をなさったことが裏目に出て体調がさらに悪化したり、など色々な方がいらっしゃいました。

その都度こちらで対応いたしますが、よほど具合が悪くないと「大丈夫です」と、たいていの方がご遠慮なさいます。
お連れ様がいらっしゃると終演時間までおひとりで救護室でお休みになり、その後ご一緒に帰られたり、そこまでではないと言われる方はロビーのイスで休まれたりもございました。

ところが、新国立劇場で看護師さんと勤務をご一緒してみて驚きました。
体調不良の方がいらっしゃると必ず「看護師」さんに看ていただきました。
バイタルといって、血圧/脈拍 などを看護師さんが測定すると、「大丈夫」といわれる方でも血圧が高すぎて一刻も早い受診が望ましいとか、脈が速いので救護室でおやすみいただかないと、などというケースもままあり、いかにみなさまが「ガマン」されているかということが判りました。もっとも、ご当人もそこまでの容体ではない、と思われている方も多いということでしょう。
客席で体調を崩され状態が芳しくないので移動していただきたいが、移動自体が危険ということで、車イスをお席近くまで寄せてそれに移っていただいた後、スタッフで車イスごとかかえてロビーまで行き、救急車で病院へ、というケースもありました。

日本人は特に「奥ゆかしい」というか遠慮深い人が多いのかもしれませんが、看護師さんに対応していただくと、各個人のお客様の状況が判り、その後医療に結びつけないとならない時は病院受診をお薦めできました。
やはり看護師さんはすごいですね。

たくさんのケースをご一緒したことで、これは油断できないケースだぞ、ということも判るようになってきて、本当にいい経験をさせていただいたと思います。