フィドラー ~屋根の上のヴァイオリン弾き~


明治座(浜町)

3月末、明治座で観ました。
何年ぶりだろうか……、テヴィエ役は 森繁久彌さん、西田敏行さん、上條恒彦さん で拝見しております。
今回は、市村正親さんでした。

「ほたるさん と呼ばれて」では「私のテヴィエはやはり『森繁さん』ですね」と書かせていただきました。
私の帝劇在籍中、フィドラー(「屋根の上のヴァイオリン弾き」のことです)は6ヶ月、3ヶ月、3ヶ月 計12ヶ月(1年ですね)ご一緒させていただいており、このテヴィエは森繁久彌さんでした。
チケットはすべてソールドアウト、4時間もの長時間公演でしたが、開演すれば物語に引き込まれ、それこそあっという間に終わってしまう。お客さまは「泣いて、笑って」心からこのミュージカルを楽しんでいらっしゃいました。

ホントに何年ぶりに観たんだ? 私。
1994年から西田さんが引き継がれているので、その時に一度拝見したはずですが、記憶が定かでない。どの道30年くらいは観ていない計算になります。

市村正親さんのテヴィエ、素晴らしかったです。
久しぶりに「フィドラー」にどっぷり浸かった感じ。やっぱりフィドラー好きだ。
つれさん(鳳蘭さん)のゴールデ ユダヤ教の「しきたり」を重んじる、ちょいと強い母親キャラがピッタリ。
もう、あっという間に昔に戻り、マスクをしていたからよかったものの、そうでなければずっとクチパクで一緒に歌う私の、隣の席で観ていた友人は閉口したかもしれません(苦笑)。
まあ、なんせ1年も観ていますから、歌詞はもちろんのこと、台詞もほぼ頭の中に入っています。
ヴァイオリン弾き役の俳優さんが、屋根の上で奏でるヴァイオリンの演奏から芝居は始まりますが、その瞬間、涙が頬をつたいました。

市村正親さん 劇団四季「雪ん子」1975年のテレビの舞台中継から拝見しております。
特に四季時代の市村さん、好きで好きで。
ちなみにこの「雪ん子」は子どものためのミュージカルでしたが、なんのなんの、大人でも十二分に楽しめるクオリティの高さ、市村さんは はやてのげん(村の子供) だったようです。やくざ役?(人さらい)で鹿賀丈史さんもお出になっていたみたいです。
その後「ジーザス・クライスト=スーパースター」のヘロデ王、「ウエストサイドストーリー」のベルナルド、ベイビ―ジョン、「かもめ」トレープレフ、「エレファントマン」ジョン、「エクウス」アラン、「コーラスライン」ポール、「オペラ座の怪人」ファントム、「ミス・サイゴン」エンジニア……、まだまだ拝見しております。
こうやって書き出してみると本当にたくさんたくさん観ておりますね。

そんな中「フィドラー」は、ちょっと距離を置いていました。森繁さんのイメージが強かったのがあったのでしょうかね。
今回、観るぞ! と勇んで「明治座」へ。
あー、よかった、もっと早く観るべきでした。

市村さんのテヴィエ/一家の父親テヴィエ
神様と相談や駆け引きをしながら胸のうちを明かす芝居もいい。コミカルな上に間が絶妙。ストレートプレイもいいけど、やはりミュージカルの市村さんですね。
どんな逆境に立たされようとも前向きに生きて行くテヴィエ。住む地を追われ、荷車に家財道具を積み込み、住み慣れた我が家を後にする、という悲しい結末です。やり切れない想いに駆られもしますが、凛として顔を上げ、荷車を引いていくテヴィエ。どんな時でも希望を失ってはならない、とこちらも勇気づけられます。

ボトルダンス。娘の婚礼で披露される、頭に被った帽子の上にボトル(ビン)を乗せて、それを落とさないように正装の男たちが踊ります。

最初は2人でゆっくり始まったダンス、だんだん早くなり難度も上がり、人数も増えていき最後は5人に。
ボトルを乗せて無事に踊り切った後の、男たちの激しいダンス。見物のひとつです。
数人で腕を絡ませあいながら回っていきます。遠心力がついてどんどん激しくなる。
客席から見ていてもすごいのに、傍で見たらどんなにすごいだろ。
私がご一緒した1年の公演中、1度だけボトルが落ちたことがありました。
その瞬間、舞台上からも客席からも「あ~~」という声があがり、落としたダンサーは列から外れました。そうですよ、みなさん。ボトルは正真正銘、帽子の上に乗っかってるだけなんです(笑)。

帝劇在籍中のフィドラーの出演者の中で、私が一目置いていたのが、アナテフカ村でもっとも尊敬される司祭ラビ 益田喜頓さん とその息子メンデルです。
ラビは司祭さまですから、安息日のお祈りや冠婚葬祭などで本領を発揮します。
また、事あるごとに村人たちは司祭さまの言葉を聞き、それに従って行動します。
喜頓さんの ラビ はひょうひょうとして暖かく、舞台に登場するだけで存在感がありました。
その息子メンデル 三上直也さんでした。キレイな高い声、はっきりした台詞の言い回し、そんな三上さんのメンデル、好きでした。
三上さんは、私と同じ駅を利用されており、時々お見掛けしました。

さーて、次は「ラ・カージュ」観なくっちゃ。

この3月末の公演は帝劇がリニューアル閉館しているので、浜町の「明治座」での公演でした。
足を運んでびっくり、なんと大きな「のぼり」が何本も立ち並んでいました。
「屋根の上のヴァイオリン弾き」「市村正親 さん江」「鳳 蘭 さん江」ほかズラリ、のぼりが風にはためいておりました。

この光景は明治座でしか見られませんね。